森鷗外『花子』
出演者コメント
花子役:宗三左文字
「タイトルロールなのでワクワクして台本を開いたら、台詞が一つしか無くて吃驚しました。しかし、イメージに一番しっくりきたそうなので、しょうがないですね」
ロダン役:日本号
「彫り物からの連想で配役された。今回の面子だと俺が最年少になるんだが、正三位の威厳でそうは見えねえだろう」
久保田役:へし切長谷部
「宗三に対して嫌みな言葉を吐いても険悪になりにくいとして配役されました。次は“長谷部にこそ”という役をお願いしますね」
興行師:博多藤四郎
「出番がほとんど削られた興行師ばい。主人が短刀を出したいけん、配役されたと!」
この作品は実話をもとにしています。
花子さん(本名:太田ひさ)は34歳で単身渡欧し、女優として活躍されました。
特に、切腹の芝居の冷ややかに鬼気迫る様子が評判で、愛嬌を振り撒く女性像とは一線を画したそうです。
ロダンは、花子さんの作品を数十点作り、中でも死に顔を彫った、デスマスクが有名です。
本作では花子さんを17歳にしていますので、実際の年齢の半分くらいです。若い方が良いという鷗外の判断でしょうか?
本作のメッセージとは何か?
私は、「欧米へ劣等感を持つことはない、日本には日本の良さがある」のだし、「欧米だから良いというわけでもない」だと思います。
鷗外の他作品にも欧州と日本を比較するものがあり、欧米列強に追い付け追い越せとがむしゃらだった日本に対し、諭すような印象を感じます。
本作のキャラクターは実に分かりやすく記号が与えられています。
ロダン=価値観に縛られない者。鷗外の理想的存在。
花子=日本の精神を持ち続ける者。伝統的な日本。
久保田=欧米列強の価値観に目が眩んでいる者。当時の日本。
最後にロダンが久保田を説くくだりは、鷗外が当時の日本の人々に対して伝えたかった言葉なのでしょう。
地に深く根を下ろしたような、強さの美。
それは、二千年間脈々と続く日本人の文化と精神の美しさ。
確かに、一度は欧米文化至上と変化した日本ですが、結局、自国の文化は忘れ去られることなく、今も、私たちは直感的に理解していますよね。
さて、ついに英語版刀剣乱舞のリリースが決定し、日本の歴史を背負った刀たちが、世界に発信されていく番が来ました。
ただの武器ではない、鋼に宿った強さの美が、広く知られていくことを願ってやみません。