第二弾「刀剣男士は武器である」いかがでしたでしょうか?
このたびはMMD紙芝居に挑戦いたしました。
これには、おナスさんに多大なるご協力をいただきました。
ここでもお礼申し上げます。
山本周五郎には『死處』と似た話があります。
上杉を舞台にした『城を守る者』です。
合戦に出ている間、城を守るために残った男とその息子の話なのですが、こちらは少々枝葉があり、メッセージ性がストレートに伝わってくるのは『死處』の方かと思います。
また77年後に発見されたというのもいいですね。
世界が戦争の緊張に晒されている今、私たちに読まれるために出てきたように思えました。
さて、私はいつも編集後記を動画化していますが、今回は見送りました。
理由は作品解釈にあたって戦争への言及が避けられないことが挙げられます。
これを動画化することでコメントが荒れること、動画の余韻を壊すことを避けたかったのです。
この作品は第二次世界大戦の最中に書かれました。
ですから、戦争に対するなんらかのメッセージが込められているはずです。
注目したいのは、「名と実」というキーワードでしょう。
「虚名」なる言葉も登場しました。
「名あって実の伴わざること」
私が想起したのは、戦時中の生活について語った祖母の言葉でした。
「竹槍訓練っていうのがあってね。それで戦闘機を落とそうってやらされて、そんなもので落とせるわけないのに、みんな分かっているのに、やらなきゃいけなかった。それが戦争だから」
もし、戦闘機がやってきて実際に竹槍を使って戦おうとして死んだら、その人は称えられたでしょう。
でも、それは「名あって実の伴わざること」ではありませんか。
そんな死に方は死處を間違っている。
「命を粗末にするな」と吉信に言わせた山本周五郎。
戦時中のムードの中で彼が主張したかったのは、この一言ではないでしょうか。
本作で夏目吉信役を演じた「御手杵」という槍について少々触れさせてください。
御手杵は結城秀康の槍であり、結城家の家宝であった槍です。
天下三名槍にも選ばれた素晴らしい槍です。
(御手杵・蜻蛉切・日本号の三口)
しかし、他の二口に比べて、御手杵には名高い戦功があるわけではありません。
どちらかというと、宝物として大事にされたことが有名な槍です。
ですが、その人の愛情が御手杵にわざわいしました。
東京大空襲の折、御手杵が焼けないよう土に埋めようと当主が言ったものの、使用人たちは家宝にそんなことができないと言って、蔵にしまったままにしたのです。
結果、蔵に焼夷弾が落ち、蔵の中で御手杵は修復不可能なまでに焼けてしまったのでした。
私は戦場で振るわれ、武器として死處をまっとうする御手杵を劇でいいから見てみたいと思いました。
焼けてしまった彼が演じるからこそ、吉信の台詞にこもる色合いも変わると期待しました。
それが、彼を主役に選んだ理由です。
第三弾は「刀剣男士は美術品である」です。
SCPということもあって表現に悩んでいますが、なんとか形にしたいと思います。